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完全ブック〜見どころ〜

多発性硬化症完全ブックと視神経脊髄炎完全ブックを改訂しました。
▶「多発性硬化症完全ブック・視神経脊髄炎完全ブック2/14発売

全般として「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」の内容を反映しています。ガイドラインが発行されたのは去年9月。ちょうど改訂版の初稿が完成したころです。すぐに内容をガイドラインと照らし合わせて調整しました。

下記、改訂版において、大きく記述を変えた箇所をご紹介いたします。

両書籍共通

第1章「免疫のしくみ」

MS第4版改訂時・NMOSD第1版発行時、「免疫学の分野は進展が目覚ましく、専門的に正確に述べるのが難しい」という理由から、それまで掲載していた免疫の解説を全て削除しました。

しかし治療薬の作用機序を知るにあたってはやはり、ある程度の免疫の知識が必要になります。また、コロナ禍以降、ワクチンの情報が増えました。これを理解するにも最低限の免疫の知識が必要だという判断から、改訂版では免疫の解説を復活させました。

第8章「日常生活の過ごし方」

コロナ禍以降、コロナワクチンだけではなく、帯状疱疹ワクチンや子宮頸がんワクチンなどの質問も増えました。そこで、ワクチンは別項目に分けて解説しています。ワクチンの種類と、それぞれの注意点まとめた一覧表も作りました。ワクチンを打つ場合に参考にしていただけると思います。

多発性硬化症完全ブック第5版

第4章「経過」

この5年半で、MSの経過についての認識、特に「進行」の捉え方が変わりました。これまでは「MSは再発と寛解を繰り返した後、症状が徐々に進む進行期に入る」と言われていましたが、最近は、それだけではなさそうなことが分かってきています。

改訂版では最新の考えを解説しています。これに伴い「第2章:症状」「第3章:検査・診断」にも新しい記述を加えています。

第6章「再発予防・進行抑制の治療」

改訂版では2023年9月現在で承認されている疾患修飾薬(DMD)を全て掲載しました。具体的にはメーゼント®とケシンプタ®を追加しました。また、全ての薬の薬剤費を掲載しています。

そして、8種類あるDMDをどのように選んでいくか、DMDはいつまで続けるのかなど、多くの人が疑問に思っています。これに対する最新の考え方を解説しました。

視神経脊髄炎完全ブック第2版

第6章「再発予防治療」

この5年半で、NMOSDの再発予防治療は大きく変わりました。以前はステロイド薬と免疫抑制薬が主流だったのが、2019年から生物学的製剤が毎年1つずつ発売され、現在5つの製剤が使えるようになっています。

改訂版では、その5製剤を全て解説しました。具体的にはソリリス®、エンスプリング®、ユプリズナ®、リツキサン®、ユルトミリス®です。全ての薬の薬剤費も掲載しています。

一方、今も多くの患者さんがステロイド薬を使っています。そのステロイド薬についても解説しました。

第10章「小児視神経脊髄炎」

第2版では新たに、小児視神経脊髄炎の章を作りました。小児に対する急性増悪期の治療と再発予防治療の他、保護者ができる症状の観察や学校生活の過ごし方、心のケア、脳神経内科への移行についても解説しています。

この章は、小児神経の先生にもご監修をいただきました。

おわりに

この完全ブックは、多くの方に病気の理解を深めていただけるよう、分かりやすい言葉・表現を用いることを第一としました。そのため、患者が書いたものを複数の専門家が監修し、その考えや意見を融合させながら制作を続けました。

患者の意見を優先させると専門性に欠け、専門家の意見を優先させると難しくて分かりにくくなります。また、専門家の間でも意見が分かれることが多々ありました。それら全てを融合させるというのはなかなか骨の折れる作業でした。

時に骨どころか心が折れそうになりましたが、患者さんやご家族により良い生活を過ごしてほしいという思いで制作を続け、そして発売を迎えることができました。

病気の理解を深めるために、ぜひお役立てください。

2024年2月3日
MSキャビン
中田郷子より