多発性硬化症(MS)

日常生活でできること

再発のきっかけとなるものに注意

MSの再発のきっかけとして、感染症、精神的ストレス、過労、皮膚が赤くなるような過度の日焼けなどが挙げられています。風邪がはやっている時期は特に風邪予防に努め、疲れがたまったらできるだけ休息を取るようにしてください。症状のせいで十分な睡眠がとれないような場合は、症状をやわらげられないか主治医とご相談ください。

体力・筋力を落とさないために運動を

MSでは運動に制限はありません。体力・筋力を落とさないために、そして健康維持のためにも運動が勧められています。ウォーキング、水泳、ヨガなどをしている人が多いようです。

運動の内容は病状にもよるので、主治医と話し合ってください。疲れがたまらないよう、少量の運動を毎日繰り返して続けることが大切です。

[ウートフ現象に注意]
ウートフ現象がある場合は、プールでの運動などご自身に合った運動を心掛けてください。速やかに体温を下げられるよう、冷たい飲み物や冷却グッズを用意しておくことをお勧めします。
ウートフ現象:体温が上がるとMSの神経症状が一時的に悪化する症状。体温が下がれば症状は回復します。ウートフ現象の有無と程度は人それぞれです。

適度に日光に当たろう

外で運動をすると日焼けが気になるところで、それが再発につながるのではないかと心配している人がいます。しかしMSでは適度に日光に当たることが勧められています。下記のブログを参照してください。

日常生活の中で適度に日光に当たることを心掛けてください。皮膚が赤くなるほどの過度な日焼けは避けてください。

室内での日光浴について、窓ガラスはビタミンDの生成に役立つ紫外線(UVB)をほぼ遮断します。そのため窓越しの日光浴では効果は望めません。一方、紫外線は乱反射するので、日光に直接当たらなくても、窓を開けるだけ、あるいは日陰にいるだけで効果が望めます。

[夏場の日光浴は避けてください]
ウートフ現象がある場合、また、近年の気温上昇を考えると、夏場の日光浴は大変危険です。国立環境研究所によると、夏場は短時間で必要な紫外線を取り入れることができます(下表参照)。洗濯物を干したり取り入れたり、ちょっとした外出だけで十分といえるでしょう。

「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定(国立環境研究所)」

バランスの良い食生活を

MSでは食べ物に制限はありません。欧米では低脂肪食や地中海食がMSに良いといった報告もありますが、人種やもともとの食生活も異なるので、日本人のMS患者さんにそれが当てはまるかは分かりません。

一方でMSは日本でも年々増えてきています。その理由として、生活のスタイルが欧米化したことによって衛生環境が良くなったから、そして食生活も変化したからだという説があります。塩分を取り過ぎるとMSに良くないという研究や、MSの人は思春期に太っていた人が多い、などの報告もあります。

塩分の取り過ぎや肥満は、MSに限らず健康全般の面で良くありません。ジャンクフードの食べ過ぎにも注意し、MSではない人と同じように、健康維持のためのバランスの良い食事を意識してください。

飲酒は問題ありません。健康を害さない程度に楽しんでください。

喫煙は病気を悪化させる

喫煙はMS発症のリスクを上げるだけではなく、MSの診断後であっても病気を悪化させる報告が相次いでいます。また、たばこを吸うと心臓・肺への負担が増し、運動機能や持久力が低下する可能性もあり、風邪をひきやすい状態にもなります。

受動喫煙にも同様のリスクがあるため、MSの人はもちろん、同居している人の禁煙も望ましいです。

個人差が大きいMSでは就労も人それぞれ

MSでは、病気を抱えていない人と同じようにフルタイムで勤めに出ている人、時短勤務や在宅勤務を行っている人などがいます。人それぞれ、さまざまな形で仕事をしています。

障害が残り、それが半年程度続いていれば、障害者手帳を取得できる可能性があります。社会参加の1つの手段として、該当しそうなら手帳の取得を考えてください。主治医にご相談ください。

同時に、自分自身の能力を高めることも必要です。就職に有利な資格の勉強をしたり社会情勢を把握したりして、自分に力を付けることも忘れないようにしてください。

職場にはできることとできないことを明確に

職場に病名を伝えることについては賛否両論あります。伝えることで会社に内緒にしているといった不安がなくなります。病状への配慮も得やすくなります。しかし伝えることで大事な仕事が任されなくなるかもしれません。昇進に影響することもあるかもしれません。

仕事に影響を与えかねない症状が問題になっている場合は、病気のことをしっかり説明しておいた方がよいかもしれません。できることとできないことを具体的に書き出して説明してください。主治医からの意見書も時に有用ですが、病名を告げるかどうかはご自身の判断になります。

何かの手術を受けることになったら

参考になればと思い、ブログを公開しています。
多発性硬化症と手術(1)
多発性硬化症と手術(2)

(2024/7/31更新)