MOG抗体関連疾患(MOGAD)

治療

MOGADには根治療法はありません。治療は、再発した時の「急性増悪期の治療」、再発しないようにする「再発予防の治療」、そして残った症状をやわらげる「対症療法」の3つに分けられます。

しかしMOGADはまだ、治療ガイドラインが定められていません。実際には、急性増悪期の治療はわりと見解が一致していますが、再発予防治療については専門家の間でも意見が分かれている状況です。予防治療をするとしても、何を、どのくらいの量で、どのくらいの期間服用するか、基準がありません。

実際の治療内容は個々の患者さんで違います。主治医とよくご相談ください。

急性増悪期の治療(ステロイドパルス療法)

急性増悪期のMOGADで最もよく行われるのは「ステロイドパルス療法(パルス療法)」です。通常、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)を1日に500〜1,000 mg、3〜5日間点滴します。これを「1クール」といいます。クールとは「1つの治療期間」といった意味です。

MOGADでは通常、パルス療法を1クール行います。パルス療法が比較的よく効くことがMOGADの特徴の1つでもありますが、効果が不充分な時にはもう1クール行うこともあります。

急性増悪期の治療(血漿浄化療法)

「血液中からMOG抗体などMOGADに関連していそうな血液中の因子を取り除くことで病状を改善させる」といった治療です。

ステロイドパルス療法の効果が充分に得られない場合や視神経炎や脊髄炎が重度の場合、また副作用のために大量のステロイド薬が使えない場合は、血漿浄化療法(単純血漿交換療法、血漿吸着療法)が行われることがあります。

急性増悪期の治療(免疫グロブリン療法)

視神経炎でステロイドパルス療法の効果が不十分な場合は、静注用人免疫グロブリン製剤(献血ベニロン® -I)を使うことができます。点滴薬で、「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」「原則として、抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性の患者へ投与すること」の効能があります。

再発予防の治療(経口ステロイド薬)

MOGADの再発予防薬として、免疫抑制薬と併用、あるいは単独で使われることもあります。プレドニゾロン(プレドニゾロン®、プレドニン®)、メチルプレドニゾロン(メドロール®)、デキサメタゾン(デカドロン®)などが使われます。ステロイド薬をどのくらいの量でどのくらいの期間使うかは、基準がありません。

再発予防の治療(免疫抑制薬)

MOGADの再発予防のために日本でよく使われているのは、アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)50〜150mg/日と、タクロリムス水和物(プログラフ®)1〜3mg/日です。シクロスポリン(ネオーラル®)150〜300mg、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)750〜3,000mg/日が使われることもあります。このうちプログラフ®とネオーラル®は、薬剤の血中濃度を参考にしながら用量を調整することが多いです。

免疫抑制薬をどのくらいの量でどのくらいの期間使うかは、基準がありません。また、MOGADの再発予防治療としての効能は承認されていません。

再発予防の治療(免疫グロブリン療法)

小児などで経口ステロイドや免疫抑制薬が使いにくい場合などに、3~4週間隔で静注用人免疫グロブリン製剤を点滴して再発を予防することがあります。MOGADの再発予防治療としての効能は承認されていません。

残った症状を緩和

MOGADでは、急性増悪期治療を適切に行っても、症状が充分に回復せずに残ってしまうことがあります。それがこの先良くなっていくのか、または良くならないのかは分かりません。

次の症状は薬で軽減できることがあります。我慢せず、薬の服用を主治医とご相談ください。

※一部の薬を掲載しています。使われる薬はほかにもあります。

痛み・しびれ

抗てんかん薬
カルバマゼピン(テグレトール®)トピラマート(トピナ®)、クロナゼパム(リボトリール®、ランドセン®) 、フェニトインナトリウム(アレビアチン®)など

抗うつ剤
アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール®)、イミプラミン塩酸塩(トフラニール®)、デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ®)、パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル®)、エスシタロプラムシュウ酸塩(レクサプロ®)など

その他
ミロガバリンベシル酸塩(タリージェ®)、プレガバリン(リリカ®)、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン(トラムセット配合錠®)、メキシレチン塩酸塩(メキシチール®)、フェンタニル(デュロテップ®MTパッチ)など

関連ブログ

「多発性硬化症と視神経脊髄炎の疼痛」
近藤誉之 先生(関西医科大学総合医療センター)

排尿障害

膀胱の筋肉が過敏に反応してしまう場合
ビベグロン(ベオーバ®)、ミラベグロン (ベタニス®)、イミダフェナシン (ウリトス®、ステーブラ®)、フェソテロジンフマル酸塩 (トビエース®)、オキシブチニン塩酸塩(ポラキス®)、フラボキサート塩酸塩(ブラダロン®)、プロピベリン塩酸塩(バップフォー®)、酒石酸トルテロジン(デトルシトール®)、プロパンテリン臭化物(プロ・バンサイン®)、コハク酸ソリフェナシン(ベシケア®)など

排尿時に尿道の筋肉が緩まない場合
ウラピジル(エブランチル®)、ナフトピジル (フリバス®)、タムスロシン塩酸塩(ハルナール®)など

筋肉の収縮が弱い場合
ベタネコール塩化物(ベサコリン®)、ジスチグミン臭化物(ウブレチド®)など

排便障害

便秘(便をやわらかくする)
酸化マグネシウム(酸化マグネシウム®、マグミット®、マグラックス®)、クエン酸マグネシウム(マグコロール®)、ルビプロストン (アミティーザ®)、リナクロチド (リンゼス®) 、潤腸湯、大建中湯、麻子仁丸 など

便秘(腸を刺激する)
センノシド(プルゼニド®)、センナ(センナ®、アローゼン®)、ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン錠®、ラキソベロン内容液®)、ビサコジル(テレミンソフト坐薬®)など

便失禁
下痢止めの塩酸ロペラミド(ロペミン®)、便の硬さを調整するポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®)など。便が緩くて困る場合はビフィズス菌製剤(ラックビー®)や酪酸菌製剤(ミヤBM®)など

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視神経脊髄炎とMOG抗体関連疾患(20分)
中島一郎 先生(東北医科薬科大学)

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