多発性硬化症(MS)

多発性硬化症とは

多発性硬化症(MS)は脳、脊髄、視神経の病気

多発性硬化症は脳、 脊髄、視神経の病気です。英語名はMultiple Sclerosisで、世界的に「MS(えむえす)」と呼ばれています。発症原因は不明で根治療法はなく、指定難病に定められています。

発症年齢は20〜30歳代に多く、20歳代に発症のピークがあります。思春期以前あるいは50歳以上で発症することもありますが、まれです。男性よりも女性に2倍多く発症します。患者数は世界的に年々増加しています。

2017年に行われた全国臨床疫学調査では、MSの国内患者数は全国で18,000人、有病率は14.3人/10万人と推計されました。その後、調査は行われていませんが、全世界的にMS患者が増えている事実や過去のデータから考えると、2023年現在で患者数は2万人を超えていることが想像できます。

発症の原因は分かりませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

遺伝的な要因

MSの発症率は人種間で異なり、欧米人に多く、アジア人には少ない病気です。また血縁者にMSの人がいると、血縁関係の強さに応じて発症率が高くなります。MSを発症しやすくなる遺伝子や、発症しにくくなる遺伝子があることも分かっています。

けれどもMSでは特定の遺伝子の異常は認められておらず、一般的にイメージされているような遺伝病ではありません。

環境因子

MSは緯度の高い地域(北米、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなど)で発症率が高く、赤道付近での発症率は非常に低いです。同じ国内でも緯度の高い所ほど発症率が高く、日本でも北にいくほど発症率が高くなっています。

また、思春期以前にMS 発症率の低い地域から高い地域に引っ越した人は、思春期以降に引っ越した人よりも発症率が高くなることが報告されています。つまり、思春期までを過ごした環境によってMSの発症率が異なるということです。このことからMSには何らかの環境因子が関与していることが伺えます。

考えられる環境因子として、紫外線、ビタミンD不足やウイルス感染、喫煙などが挙げられていて、エプスタイン・バー・ウイルス(EBウイルス)、ヒトヘルペスウイルス6 (HHV-6) などが注目されています。

しかしMSを起こす特定のウイルスの存在は明らかになっておらず、MSは感染症ではありません。MSの人と接することでMSがうつることはありません。
(2023/10/12更新)