MSとは何ですか?
MSは「多発性硬化症」という脳、脊髄、視神経の病気です。英語名は「Multiple Sclerosis」で、その頭文字から世界的に「MS(えむえす)」と呼ばれています。根治療法がない難病です。人にうつる病気ではなく、特定の遺伝子の異常は認められていません。
どんな人がなるのですか?
20~30代に多く、男性よりも女性に多く発症する傾向があります。有病率は人種でも違い、欧米白人に多い病気です。また緯度の高い地域に多く、日照時間との関連が指摘されています。国内推定患者数は約18,000人です。患者数は世界的に年々増加しています。
どのように起こるのですか?

脳、脊髄、視神経の神経線維は「軸索(じくさく)」とそれを覆う「ミエリン」というカバーでできています。MSは自分の免疫システムがミエリンを外敵として繰り返し攻撃してしまうことによって起こります。また、近年ではミエリンへの攻撃に加えて、神経細胞や軸索そのものが初期のうちから障害されていることも分かってきています。
発症には環境因子、遺伝的素因などの関与が示されていて、中でもEBウイルス感染とMS発症との関連が注目されています。
どんな症状があるのですか?
MS全体としてよく見られる症状は視力障害、感覚障害、運動障害、疲労、排尿障害、ふるえ、物忘れなどで、個人差が大きいです。また、見た目に分かりにくいものが多く、さらに症状は季節や体調の影響でよく変わります。日によって、また時間によって変わることもあります。体温が上がると一時的に症状が悪くなることがあり、これを「ウートフ現象」といいます。
どのように診断されるのですか?
MSを単独で確定診断できる検査はありません。丁寧な問診と神経学的診察、複数の検査が行われ、その結果を総合的に見て診断されます。検査にはMRI検査、髄液検査、誘発電位検査などがあります。通常、脳神経内科(神経内科)が担当します。
どんな治療がありますか?
発症・再発時にはグルココルチコイド(ステロイド)が使われます。ステロイドの効果が得られない場合には血漿浄化療法が追加されることもあります。再発予防にはベタフェロン®、アボネックス®、イムセラ®/ジレニア®、タイサブリ®、コパキソン®、テクフィデラ®、メーゼント®、ケシンプタ®の8種類の薬剤が、また、二次性進行型に対してはメーゼント®とケシンプタ®が「疾患修飾薬」として承認されています。
これからどうなるのですか?
MSの経過はさまざまで誰にも予測できません。何年も安定している人もいれば、年に1回くらい再発する人、いつの間にか歩きにくくなっていくような人などいろいろです。国内外の統計では、早い段階から予防治療を始めることで、良い状態が長く保てることが示されています。病状把握のため、定期的な診察が必要です。
利用できる社会資源はありますか?
MSは難病法によって国の指定難病に定められています。MSと確定診断され、さらに決められた条件を満たすと、医療費の一部が公費で負担されます。窓口は住所地を管轄する健康福祉センター(保健所)などです。
PDF版はこちらです。私的範囲内でダウンロードしてお使いください。
→すぐ分かるMS(1.3MB)
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ユーザー番号:QP6LGG2AEP
多発性硬化症をさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
→「多発性硬化症のあらまし」
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新規公開:2000年1月
更新:2025年5月26日
文:MSキャビン編集委員
大橋高志、越智博文、近藤誉之、木村公俊、千原典夫、富沢雄二、中島一郎、新野正明、宮本勝一、横山和正、渡邉 充、中田郷子