視神経脊髄炎(NMOSD)

妊娠・出産

NMOSDを理由に妊娠を諦めることはない

NMOSDが直接の原因で子供ができなくなったり、出産に悪影響を及ぼしたりすることはありません。流産、死産、奇形発生、分娩時の合併症のリスクが高まっている事実はありません。

妊婦の血液中のAQP4抗体が胎児に移行したという報告がありますが、これによって赤ちゃんが病気を起こしたという報告はありません。赤ちゃんの血液中のAQP4抗体は通常、数カ月で消失します。

現在は「NMOSDを理由に妊娠を諦めることはない」という見解で一致しています。

産後に一時的に再発が増える

NMOSDでは産後に一時的に再発が増えることが報告されています。特に産後3カ月に最も再発率が高くなります。

一方、NMOSDにおいて攻撃対象となるAQP4は、胎児の栄養膜にも発現しています。従ってNMOSDが再発すると、この胎児の栄養膜も攻撃され、そこに炎症が起こって胎児に栄養が届かなくなり、結果、流産を引き起こす可能性が高くなります。

妊娠中や産後の再発を抑えるため、そして流産を引き起こさないようにするため、NMOSDでは妊娠前から病状をしっかり安定させておくことが必要です。

NMOSDで使われる薬と妊娠・授乳

下表のように、NMOSDで使われる薬の中には妊娠中は使えないものがあります。そのような薬を使っている場合は別の薬への変更が必要になってきます。従って、妊娠の希望がある場合や妊娠する可能性がある場合は、必ず主治医に伝えてください。主治医に言いにくい場合は看護師さんにお伝えください。

薬 剤妊 娠授 乳
イムラン®、アザニン®有益性投与有益性授乳
プログラフ®有益性投与問題ない可能性が高い
セルセプト®禁忌勧められない
ソリリス®有益性投与有益性授乳
エンスプリング®有益性投与有益性授乳
ユプリズナ®投与しないことが望ましい
(添付文書には「最終投与後6カ月間は避妊」と記載)
有益性授乳
リツキサン®有益性投与有益性授乳
ユルトミリス®有益性投与有益性授乳
プレドニン®有益性投与授乳可能
ステロイドパルス療法妊娠2〜4カ月は避ける投与後2時間は避ける

「有益性投与」
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与
「有益性授乳」
治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討

参考:
「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」
「妊娠と授乳 第3版 (2020年)南山堂」
各薬剤の添付文書

不妊治療

不妊治療がNMOSDに影響を与えるかどうかは、今のところ分かっていません。

男性がNMOSDの場合

男性がNMOSDの場合も、NMOSDが直接の原因で子供ができなくなったり、出産に悪影響を及ぼしたりすることはありません。NMOSDで使われる薬は、アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)を除いて、妊娠に関して男性側に注意が必要とされているものはありません。

アザチオプリンに関しては、添付文書に「可能な限り、投与期間中はパートナーの妊娠を避けさせることが望ましい」と書かれています。
(2024/8/17更新)

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